『日本の動画配信トレンドとU-NEXTの戦略』について、ACE Fair2020でお話ししました
U-NEXTは、2020年10月に開催された、アジアのコンテンツビジネスに関するカンファレンス『Asia Content & Entertainment Fair(ACE Fair)』に登壇。「日本のOTTトレンドとU-NEXTの戦略」に関してお話しする機会をいただきました。
本記事では、その映像を一部編集を加え記事化。U-NEXTが捉えている日本のOTT市場に関しての概要をご紹介します。
こんにちはU-NEXTの堤と申します。今回は、日本でサービスを提供するOTT事業者を代表し、日本のOTT(Over The Top:オンラインストリーミングサービス)市場についてご説明いたします。
最初に、U-NEXTについて簡単にご紹介させてください。我々は、日本のローカルOTTとしては最も大きなマーケットシェアを持つ会社・サービスです。
日本にはいくつかのOTTプレイヤーがおりますが、主要プレイヤーは4社。グローバルプレーヤーとして『Netflix』『Amazon』、ローカルプレイヤーとして国内の主要テレビ局が運営する『Hulu Japan』に『U-NEXT』です。この中で、U-NEXTは3番目のシェアを持つOTTサービスです。
U-NEXTは日本において最も早くOTTに参入した会社でもあります。NetflixとAmazonが日本のOTT市場に参入したのは2015年ですが、我々は2007年。まだまだ日本のOTTが黎明期の頃から、市場にチャレンジしその中でシェアを築いてきました。現状はこの4社で市場の半分以上を占めています。
日本におけるOTTトレンド
それでは、日本のOTT市場トレンドの全体をご説明します。
2019年、日本におけるSVOD(Subscription Video on Demand:定額制動画配信)の市場規模は$2.5Billion(約2,600億円)。前年の2018年と対比すると、約6割増と急速に伸びてきております。
2020年は、COVID-19の影響もあり予測が非常に難しい状況ですが、2018〜19年以上伸びが期待できると考えられます。この数字が示すように、今日本ではOTTが急速に伸びてきている状況です。
続けて、日本におけるOTTの今後の伸び率について。
現状日本のOTTの市場浸透率は50%といわれております。諸外国と比べると、まだまだ伸長しきれていない。逆にいうと、まだまだ伸びしろがあるとも捉えられる。特にここ半年はCOVID-19の影響もあり、OTTへのシフトが劇的に進んでいます。
代表的な事例を二つご紹介します。
一点目が、パッケージからOTTのシフト。
日本では、伝統的にレンタルビデオ(DVD, Blu-ray)を中心としたパッケージでエンターテイメントを楽しむという市場があります。おそらく世界的に見てもユニークな形で、非常に大きな市場・シェアを有していたのですが、ここ数ヶ月の社会情勢の変化の中で、急速にデジタルシフトが加速している。これが、まず大きなトピックなっております。
二点目が、音楽ライブや舞台など、いわゆる興業といわれているコンテンツです。
こちらも今までは生の興業が軸にあったため、デジタル化に対しては非常に保守的でした。しかし、COVID−19によって非常に大きな影響を受けており、業界を挙げてデジタルシフト・OTTシフトが加速しています。
U-NEXTは、日本で非常に人気のあるメジャーアーティストの生ライブ配信や、伝統的にファンを掴んでいる劇団の舞台公演等々、ライブ配信をこの数ヶ月で強化。日本では高いシェアを持つ状況になっております。
パッケージが伝統的に強く、諸外国に比べOTTに対し保守的といわれてきた日本市場ですが、ついに本格的な配信ファーストの時代が来ている。コンテンツ業界、クリエイターサイド、我々プラットホーム、そしてユーザーの楽しみ方を含めて、配信ファーストになってきた。これが、今の日本市場の状況だとみております。
U-NEXTの事業戦略と特徴
この中で、我々U-NEXTがどのような戦略を持っているのかをご紹介します。
一つ目は、TVOD(Transactional Video On Demand:都度課金型動画配信)とSVODのハイブリッドモデル。これは我々のサービスモデルのユニークさでもあります。
先ほど申し上げたように、日本のユーザーはパッケージ市場に多かったのですが、ここ数ヶ月で大きくデジタルシフトしてきています。その中、新作映画を中心としたTVOD市場で大きな市場シェアを取っているのが、我々の強みでもあります。
二つ目は、SVODの戦略。
こちらの場合、まず圧倒的な品揃えがあります。このグラフはSVODのラインナップ数を比較したもので、特に映画、アニメ、そしてアジアコンテンツの三大カテゴリーでは最も品揃えが充実している。他社もそれぞれ戦略はありますが、我々が市場シェアを伸ばしてきた背景はここにあります。
視聴者数的にも、アニメと映画が一番人気を集めています。セッションタイム(視聴時間)をみると、実はアジアコンテンツが1ユーザーあたりのセッションタイムが非常に高い。
一般的なOTTですと、日本は1ヶ月20−25時間というのが一つのベンチマークと言われておりますが、特にアジアコンテンツカテゴリーでは、その倍以上のセッションタイムで楽しんでいただいています。
三つ目は、リモコンへの浸透。
日本の発売されている主要テレビメーカーの新製品のリモコンには、ほぼ全てに「U-NEXTボタン」がついている。これも一つ大きな戦略です。
OTTサービスではモバイルとテレビが主要デバイスで、テレビの視聴時間は我々のサービスの中でも圧倒的に長い。日本においても、テレビでOTTを楽しむのが当たり前になってきている中、我々はメーカーのリモコンを押さえてきました。
現状、NetflixとU-NEXTの2社がほとんどのメーカーのリモコンを押さえている状況です。
最後の四つ目は、U-NEXTオリジナルの強化。
品揃えに加え、ここでしか見れないエクスクルーシブコンテンツは競争のキーになってきています。我々も、TVシリーズ、映画、音楽ライブ、小説も含め、U-NEXTオリジナルを強化。ユーザーへのエンゲージメントを高めていこうと、取り組んでいる最中です。
メディアミックスと体験価値
最後に、少しだけ我々のユニークな戦略をご紹介したいと思います。
我々のアプリは、「映像」のみならず、「書籍(ブック)」と、ライブを含めた「音楽」という三つのメディアを、一つのアプリの中でメディアミックスした形で展開しています。
日本のコンテンツは、伝統的に原作として小説や漫画があり、そこからドラマやアニメーションなどに映像化される。さらに、グッズもしくはイベント、出演される声優さん俳優さん等のライブイベント等々へと広げていく展開が、IPビジネスの基本になっています。
我々はプラットフォームとして、それらをワンストップで提供していく戦略をとっているのです。
これは、ユーザーの目線から見てもメリットがあります。
「好きなアニメーションを見た後に原作の漫画を読みたい」、もしくは「アニメを見た声優さんのイベントに行きたい」、「グッズを買いたい」というニーズに対応できる。ユーザーから見ても、あるいはIPを展開する側から見ても、非常に重要なストーリーとなっているのです。
実際、我々ユーザーの中でも、映像を見て漫画や小説を買うというのは一つの主要な体験になってきている。他社にないユニークな体験を軸に、シェアを伸ばしている状況です。
以上です。ご清聴ありがとうございます。