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海外っぽいカンファレンスの登壇映像を内製したので、そのレシピを共有したい

昨年から、もはや当たり前になったオンラインイベント。慣れたというより、もはや飽きたという人も少なくないかも知れません。

U-NEXTでも、昨年は「主催」「登壇」の双方でオンラインイベントの実験をしてきました。

その中でも良い経験になったのは、カンファレンスでの登壇です。昨年10月に海外カンファレンスに代表の堤が登壇したのですが、その際U-NEXTではこんな映像を作ってみました。

この映像、実は社内のメンバーのみで試行錯誤し作ったもの。通常業務の傍ら、3週間ほどかけ形にしました。本記事では、最近増えているオンライン登壇の参考になればと思い、そのレシピをお伝えします。

🏃この映像を作った背景

登壇の打診をいただいたのは、8月頃。当時はオンラインイベントがすでに当たり前になってきており、Web会議ツールの背景を活用したり、良いカメラをつないで高画質にしたりするのも一周した頃でした。

他方で、企業のオンラインでの発信を見ると、特にグローバル企業はクリエイティブの質にこだわる姿勢が顕著になってきていました。AppleやGoogle、Facebookといった企業のイベントはもちろん、カンファンレンスにおいても細部にわたって企業の姿勢やブランドが伝わる作りのものが増えていました。

オンラインでの接点が今後さらに重要になるであろうことを考えると、クリエイティブの質を担保できることは重要になる。それと同時に、自社でそういったコンテンツを制作する土台を作れれば、オンラインの様々な接点の価値を最大化できるのではと考え、自社でこだわった映像を作れないかと模索し始めました。

📝リサーチ——真似られる参考例を

最初は兎にも角にもリサーチ。実際、海外を中心に映像が素晴らしいイベントは数え切れないほど存在します。制作チーム内でも、いくつもの事例を集め「SnapchatのようにCG合成したらどうか」「Appleのようにドローンを飛ばしても」など夢は広がりました。

ただ、その実装までを考えるとやれる範囲は当然限られます。かけられる工数やメンバーのスキルセットなど、所与の条件を踏まえ、最適なサンプルを絞らなければいけません。私たちが最終的に選んだのは、『Master Class』というハイエンドオンライン講座の映像。

多分家なんだけど、おしゃれに見える

多少雰囲気のある空間と一定の機材があれば再現できるのではという仮説があったこと、9月に開催されたFacebookのイベントでも近しい雰囲気で撮られていたこともあり、これをベンチマークに形にしていきました。

撮影はオフィスにあるフリースペースを利用します。もともと空間をこだわって作っており、想定していた雰囲気に寄せやすかったこと。時期もあって人通りもほぼないためです。

📷準備——機材を揃え、ためしにセット

まずは機材の準備から。

今回は、一眼レフカメラ2台(レンズは単焦点)、ストロボ4台、ピンマイク、その他ストロボ周りの機材等々を使いました。いずれも民生用の機材で、カメラが好きな人が社内に何人かいれば、おそらく調達できるであろうくらいのものです。

U-NEXTの場合、もともと映像を撮れるようにと数年前に機材を揃えていたので、これは会社で用意ができました。一式では結構な分量があるのですが、今回使ったのはほんの一部です。(もっと使いたい)

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機材の一部。よく分からないけどいっぱいある #goando風

機材を揃えたら、ロケハンへ向かいます。

今回の制作チームは、「PM」「撮影ディレクター」「撮影担当」「映像編集担当」「その他クリエイティブ担当」など5人で担当。ロケハンには、「PM」「撮影ディレクター」「撮影担当」で行き、実際に機材を一式セットしていきました。カメラ配置&ライティングで雰囲気を作りこみ、本番と同様に全体を作り込んでいきます。

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ロケハンの様子。夜のオフィスでひたすらセッティング。

並行して、プレゼン内容を固めていきます。

こういった内容は登壇者がまとめる場合もあると思いますが、U-NEXTの場合登壇するのが代表だったため、今回はPMが登壇内容の骨子を作成。また、代表が事前に話す内容を一語一句決めると言うよりは、考えながら話すタイプのため、原稿までは作成しませんでした。

社内で、盛り込むべき要素などをヒアリングし、ストーリーの骨子を作成。デザイン等を特にあてていない粗めのスライドにのせ、事前に登壇者へ渡しておくまでが主な作業です。

最後は、衣装。今回は初回だったことと、映像の雰囲気と合わせたかったこともあり、衣装も用意。事前にサイズ感だけ確認しておきつつ、当日合わせる想定で持ち込みます。

🎥当日——15分の映像でも撮影は3時間

さて、いよいよ当日です。

ただいきなり撮影とはいかず、まずはプレゼン内容の確認から。事前に内容を固めきっていないというのもあり、当日機材と衣装を合わせている間に、内容を詰めていきます。登壇者が話しやすいようにプレゼンの内容を多少組み替えつつ、映像の尺も加味してストーリーラインを再調整。それを元に、話す内容を考えてもらいます。

そして、ここからが本番。セットしていた機材に合わせて、席に座ってもらい、カメラに向かって話をしてもらいます。………というと簡単そうに見えますが、これがとても難しい。

人前で話し慣れている代表ですら、カメラに向かいながら、その先で聞いてくれるであろう聴衆を想定しつつ、スムーズに話し続けるのは簡単ではありません。

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ロケハンで話す風のポーズを撮るPM。カメラ目線を続けるのも、実は難しい。

当然、15分間通して完璧に話し続けられる人はいないので、途中で失敗もします。途中から撮り直しをしたりもするので、切り貼りが発生する想定で時計表示を揃えたり、「00:xx:xx〜00:xx:xxを使う」といったメモも必要でしょう。(私たちは初めてやった際、これをやらずに失敗しました)

どこかでプレゼンのトレーニングを受けてきている人でない限りには、それを踏まえた準備が必要だと思われます。今回は、15分の映像を作るための撮影で3時間ほどかかりました。

✂編集——ここまでのスムーズさが負荷の鍵

撮影の後は当然編集が待ち受けます。

今回は2カメの映像+スライド画像+映像素材を組み合わせて作る予定だったので、この段になって構成を切る必要に迫られました。ただ映像は、3時間分の映像×2カメの中に散らばっている状態。

(この段階で、「話す内容を決める段階で、映像のコンテを切っておけば良かったのでは」と気づいたのですが時すでに遅し)

結果、PMが人生ではじめてPremier Proをインストールし、みようみまねで組み合わせていくことになりました。かかった時間は丸二日ほど。慣れた人ならもっと早く済んだかも知れませんが、はじめての作業ということもあり、これくらいの時間が必要でした。

ここまでできれば、後は手慣れたメンバーの手を借りられます。映像編集担当に各種映像素材と構成を渡し、デザイナーにスライドの構成を、モーションデザイナーに作って欲しい映像素材(モーショングラフィックなど)のリストを渡します。

それぞれが自分の担当パートを担い、最後は映像編集担当が統括。本人たちのリソースの何パーセントを使っていたかは定かではありませんが、他の業務の傍ら10営業日ほどで仕上げてくれました。

振り返り

こうプロセスを振り返ると、「試してみる」までのハードルは比較的低いことは分かります。参考事例を見つけて、それに寄せて、撮る——まではなんとかできる。

ただ、大変なのはやはり後作業、編集です。もちろん、はじめてだったというのもあるのですが、その苦労を想定し、いかにその手前で負荷を下げられるかが継続する上では鍵になりそうです。ただ、今回この映像制作に時間をとるのが一番大変だったのは代表なので、負荷分散としては、適切だったと捉えています。

また、負荷がかかる部分は、プレゼンターのタイプにもよって変わってくるでしょう。入念に準備をし、当日話す内容を一語一句決めておく人であれば、後編集よりも前工程での詰めが重要になるはずです。

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ロケハンでは、会社にあった機材をしこたま出しましたが、ほぼ使いませんでした。なんでこんなにあるんだこの会社。

重要なのは単なる「映像撮影」ではなく、「プレゼンテーションづくり」をしているという感覚。企画〜実際の振る舞い、どう見えるかまでディレクションをしていけると完成度はさらに高まっていくのではと感じています。今回は細かくディレクションできませんでしたが、こだわりきって振る舞いなどにも気を配ると完成度は高まっていく予感がしました。

同時に、海外のカンファレンスやイベントのプレゼンターが「いかに入念に準備をして撮影しているか」をよく感じられる機会にもなりました。

最後に

U-NEXTではこの時の学びを活かし、別の登壇機会でも同じ座組で映像を制作しました。すると、やはりスピードや負荷は格段に減りますし、アウトプットの質も向上。メンバーの経験値が結構ものをいいそうなので、積み重ねられる機会を積極的に作ったり、メンバー同士で空き時間を活かして練習などをしても良いかも知れません。

もちろん手探りで進めてきたので、本職の方からすれば「もっとここが効率化できるのでは」という箇所があるかも知れません。その視点などは是非教えていただけたら嬉しいです。

この記事が、少しでも社内でプレゼン映像を作る人の力になれば🙏

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