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「1Dayリモートデザインスプリント」で、フルリモートでも迅速にUX改善策を導いた話

こんにちは、U-NEXTカスタマーインサイトリサーチャーの毛利と申します。

2019年にCXOのJasperが参画してから、U-NEXTのプロダクトチームではカスタマーインサイトにもとづいた改善をスピーディに進めるべく、デザインスプリントを導入しています。

デザインスプリントは、ステークホルダーを一か所に集め、短期集中で問題特定から解決策の発案、プロトタイプ作成、ユーザーテストまでを一気通貫で行う、Google発のデザイン改善プロセス。このあたりは、ご説明するまでもないかも知れません。

U−NEXTでは2019年後半から取り入れはじめ、サイクルが回るようになってきたのが2020年の頭頃。徐々に成果も見え「さぁ、がんがんスプリントを回していくぞ!」と意気込んでいたところに起こったのが、新型コロナウイルスの影響によるフルリモート化でした。

通常、スプリントでは執務スペース以外で専用の場を作り、そこに篭りながら1週間ほど集中実施するのがセオリーです。しかし、リモートであらゆる業務を進めなければいけない状況下、かつ忙しいステークホルダーも多い中で、私たちはこのスプリントを「オンライン」かつ「1日に圧縮して」実施できないかと考えました。

それが、本記事でご紹介する「1Dayリモートデザインスプリント」です。今回はU-NEXTが実験的に取り組んだ際の進め方と、そこでの気づきをお伝えします。 

準備:ファシリテーターの下準備が大事

まずは準備から。オンライン化にあたり、準備も多少変わります。

当日用意するモノは以下。

準備するもの
- PC
- Web会議ツール(Meet, Zoomなど)
- オンラインホワイトボードツール(miro, MURALなど)
- 紙とペン(手元でのアイデアスケッチ用)

ファシリテータを担当するメンバーは、あらかじめオンラインホワイトボード上に、通常のスプリントと同様、アイデアを書き込めるスペースを用意しておきます。用意する際には、ポストイットのフォントサイズを設定しておきましょう。議論が白熱しポストイットの数が増えても、一定の可読性を担保できます。

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また、オンラインホワイトボードを使う場合、トラックパッドが小さいPCやマウスでの操作は難しい場合があります。参加者の方々に事前に触ってもらい、支障が無いか確認してもらった方が無難です。

一方、参加者側はオンライン会議に参加する際とほぼ同様と思っていただいて構いません。しいて言うなら、長時間PCの前に座ることになるので、十分な飲み物やお菓子などを用意しておきましょう。

ちなみに、参加者数を増やしすぎないことも準備段階で意識しておけると良いかなと思います。後述しますが、オンラインではオフライン以上にコミュニケーションに配慮が必要です。6〜8人程度を最大と考えておきましょう。

プログラム:1週間を1日に絞る方法

次は当日のプログラムです。1Dayオンラインデザインスプリントでは、通常1週間かけるプロセスを1日で回すために、プログラム内容を一部削減しました。

通常は「理解→定義→発散→決定→試作→検証」という手順を踏みますが、後半2つのプロセスを外し、「理解→定義→発散→決定」までとしました。

というのも、「試作」「検証」は特に時間のかかるプロセスです。「試作」では改善策を細部まで詰める必要があり「検証」では外部のテスターも欠かせません。

今回は、後ろの工程は後日デザイナー主体で担うとし、あくまでUIコンセプトを作り上げることに目標を置きました。

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具体的には、以下の流れで進めていきます。

理解:定性・定量の調査結果から見いだしたユーザーインサイトを参加者全員に共有。
定義:参加者全員でmiroボード上にカスタマージャーニーマップを描き、どこが最大のペインポイントかを定義。
発散:ペインポイントを把握できたら、それを解決できるアイデアについて、各参加者が手元の紙にアイデアスケッチを書き出し、カメラで撮影したものを共有(発散)。
決定:最後に、共有されたアイデアをもとに、各参加者が新しいサービスデザイン案を作成・共有。参加者による各案への投票を実施し、採用案を決定。

3月におこなった際には、以下のタイムテーブルで進めていきました。

タイムテーブル
10:00〜10:15 アイスブレイク・全体説明
10:15〜11:45 定性・定量調査結果の共有(理解フェーズ)
11:45〜11:50 休憩
11:50〜12:20 現状の問題の洗い出し(定義フェーズ)
12:20〜13:10 ランチ休憩
13:10〜13:30 「将来ありたい姿」の設定(定義フェーズ)
13:30〜14:30 カスタマ―ジャーニーマップの作成(定義フェーズ)
14:30〜14:40 休憩
14:40〜15:20 改善後の評価基準の設定(定義フェーズ)
15:20〜15:50 改善の参考事例収集(発散フェーズ)
15:50~16:00 休憩
16:00~17:00 改善のアイデアスケッチの作成・共有(発散フェーズ)
17:00~18:00 改善コンセプト仕上げ・各案への投票(決定フェーズ)

スプリント終了後は、デザイナー主体で、採用案をもとにプロトタイプを作成。それをもとに、リモートのユーザーテストを通じて評価し、改善点を決定。実装につなげていきます。

ちなみに、このリモートユーザーテストについても、今回さまざまな発見がありました。こちらもまた別のnoteでご紹介させてください。

進め方:リモートゆえに、求められる配慮

ツールをオンライン化し、プログラム・目的も絞ることで、1日に集約した1Dayリモートデザインスプリント。

とはいえ、“1日だけ”といってもオンラインでつなぎっぱなしのワークショップは、相応に体力と集中力を使います。また、スプリントに限らずとも、リモートでは普段より意識が散漫になりやすかったり、参加者の発言が少なくなったり、偏りやすくもなります。

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ここでキモになるのが、ファシリテーターです。普段のスプリント以上に、参加者への気配りや進行に気を配らなければいけません。

中だるみを防ぐためにタイムテーブルをきちんと守ったり、こまめに休憩を入れたり、意識的に意見を求めたりするなど、一層の配慮をしていきましょう。

また、リモートでは論点の選択と集中を意識的にしなければ話がまとまりづらくなると感じています。

たとえば、「定義」段階で改善すべきペインポイントを広く取ってしまうと、「発散」段階で、各参加者が出す考えの方向性がばらつき、発散というより“散逸”となってしまいます。

これを防ぐには、「理解」の段階でユーザーインサイトを一度に共有しすぎないようにしたり、複数のペインポイントが見つかった場合はその場で議論すべきものを絞るなど、論点を意図的に選んでいきましょう。

時間あたりにコミュニケーションできる情報量がオフラインより少なく、発散から収束に向かうには苦戦するという前提をもって、時間配分・議論を進めていけると理想です。
メリット:合意期間の短縮と、調整コストの圧倒的低下
ここまで読むと、「大変そうだし、無理にオンラインでやらずとも」という気持ちになる方もいらっしゃるかも知れません。

もちろん、“オフラインでできるようになったらやりましょう”という判断もあると思います。ただ、今回オンラインかつ1日に短縮して開催した中では、数多くのメリットもありました。

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まずは、シンプルに改善案を1日でまとめ上げられること。サービスの改善に向けて動きたいという想いはありつつも、会議を重ねてもアイデアが固まりきらなかったり、参加者全員のコンセンサスに苦戦する組織は少なくないと思います。

これは従来のスプリント同様、ステークホルダーを集め合意形成までをゴールとすることで、スピーディかつ効果的にユーザーインサイトから改善策までを接続できます。

また、オンラインかつ1日で終えられるため、参加者の負担や調整コストが通常のスプリントと比べても大幅に軽くなりました。時間や日程はもちろん、複数拠点を持つ企業などでも、この方法であれば調整難度はぐっと下がるはずです。 

サービスと向き合うのに、オンライン/オフラインは無関係

ちなみに、前回開催した際には「U-NEXTポイントの使い勝手を高めて、リテンションを改善する」が主な論点となりました。

この議論から生まれたアウトプットは、現在絶賛実装中。そう遠くないうちにアップデートでお目にかかれると思いますので、ユーザーの方々はご期待下さい。

フルリモートに移行しても、あらゆるサービスは常に改善や変化を求められます。その中、いかに効率よくプロセスを進めていくかは、まだまだ各社模索されている段階だと思います。我々の1Dayリモートデザインスプリントもまだまだ調整途中ですが、この方法が何かしら参考になれば幸いです。

今後も、U-NEXTのUX改善への取り組みを本note上で紹介していく予定です。ご興味のある方はぜひフォローいただけると嬉しいです。


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